略奪ウエディング



そんな営業第二課が、完全に業務を終えたのは、七時を少し過ぎたころだった。

今日は課の二十七名全員が揃っている。

「やば!もう七時だよ!着替えなくちゃ」

「おい、ここにあった資料は?誰か知らない?」

「そんなの明日にしなよ」

「そうだな」

ガヤガヤとにぎやかに話しながら、皆は更衣室へと向かう。

「片桐課長!赤沼部長も!早く行きますよ」

「ああ」

言われて俺とアカマメは立ち上がった。

「お前。向こうに行ったら俺がいないから不安なんじゃないのか」

アカマメが歩きながら話す。俺も彼と並んで歩き出した。

「さっき俺も部長を見て同じことを思いました」

「生意気な」

アカマメの顔は赤くならなかった。今日は俺の挑発に乗る気はないらしい。

「片桐…」

「はい」

「二年したら、またここに来いよ。横浜に帰るんじゃないぞ」

「部長も。業績は下げないでくださいよ」

「てめぇ。本当に生意気なやつだ。せいせいするわ」

俺は笑った。アカマメは笑わなかったが、やはり赤くはならなかった。



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