略奪ウエディング
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課の全員で社屋の正面玄関ロビーの階段の下に立って、階段の上を眺めながら待つ。
俺は皆を見渡した。
タキシード姿のアカマメが緊張している。
礼服の牧野が、中野たちと話しながら笑っている。
矢崎は元気な彼女らしい黄色のパーティドレスを着て、髪を巻いている。
これから起こる出来事が、どうか彼女を幸せで包んでほしい。
これまでに感じた罪悪感や、不安を、どうか俺にすべて預けてほしい。
これからの君の人生を、俺に守らせてほしい。
君とずっと、笑っていたい。
その時。
歓声が沸き起こり俺は階段を見上げた。
純白のウエディングドレスでその細い身体を包み、梨乃が俺を見下ろしている。
「きゃー!梨乃!きれい!」
矢崎が涙ながらに叫ぶ。
俺は目を細めて梨乃を見つめていた。
彼女の目にも、涙が溢れている。
拍手と歓声の中、梨乃は一歩ずつロビーの階段を降り始めた。
俺に向かって真っ直ぐに歩いてくる。
彼女の頭上に輝くティアラが、薄いベールを押さえて垂れ下がっているいるせいか、彼女の顔がよく見えない。
…いや。違う。俺も感動で泣きたい心境になっているからだ。ぼやける梨乃の顔が、彼女が近付くにつれて段々とはっきりしてくる。
涙を堪えて微かに微笑む彼女の顔が目の前にくる。
「悠馬…」
「綺麗だ」
言葉なんかいらない。ただ、君を見つめるだけで精一杯だ。
俺の目の前で俺を見上げる彼女の美しさに、俺はそれっきり何も言えなくなってしまった。