略奪ウエディング


「…どうして…」

「君を驚かせたかった。結婚式は…できないけれど、俺の送別会なら…してもいいだろ?」

「え…?」

彼女は不思議そうな顔になる。

「今日は…送別会だ。仮装したって、誰も文句は言えない」

彼女が俺の周りの皆の方を見る。

「そうよ!今日の送別会の仮装テーマは『結婚式』!これは仮装パーティなのよ」
矢崎に言われ、梨乃の目が潤み始めた。

「そうだよ!イェー!」
皆は親指を立てて梨乃に見せる。

「皆…」

泣き出した梨乃の隣にいる茜のほうを見る。

「茜。ありがとう。最高の出来だよ」

「当たり前でしょ。世界を股に掛けるトップデザイナーが特別に作ったのよ。忙しいけれどあなたに頼まれたら断れないじゃない。張り切っちゃった」

得意げに言う茜を見て俺は微笑んだ。

実は彼女は服飾デザイナーだ。有名なコンテストで何度も賞を取るだけあって、今日の梨乃のドレスは彼女にしか似合わないような気がするほどの素晴らしさだ。

「梨乃さん。浮気だなんて言ったら悠馬が可哀想よ。これで分かったでしょ。
私なんて誘っても相手にもされなかったわ」

茜にそう言われて梨乃はさらに泣き出した。

「友達の美容師とメイクアップアーティストも呼んだのよ。今日は私たちも一緒に飲んでもいいんでしょ」

「ああ。是非。ありがとう」



――「梨乃ちゃん」

皆の後ろから一人の男性が梨乃の方に歩いてくる。

梨乃は顔を上げて彼を見た瞬間、驚いて目を見開いた。




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