略奪ウエディング
――木曜日。
その日は今年最初の雪がちらつく寒い日だった。

会議室から外の様子を気にしながら過ごすうちに早瀬との約束の時間はどんどんと迫ってきていた。

「では、今月の結果は以上で…」

議題を話し終えると俺は資料を片付けながら会議を終わろうとした。

「待て。それでいいのか?もう、意見はないのか」

…げ。アカマメ。
何で今日に限ってここにいるんだよ。
月間報告会議になんて、俺が金沢に来てからは一度も顔を出したことがないくせに。

「片桐。いつもこんな終わり方なのか。どうなんだ」

「ええ。最近ではいつもこうですよ。業績は常に前月を上回っています。一人一人が自覚を持って動いた結果を数字が証明しているんです。俺から教えることはもうありません」

面倒くさく思いながらも部長に説明する。

「いかん。これではダメだ。新規開拓の根底を説明してやれ」

「は?そんなことはもう伝えてあります。この数値が証明だと先ほど申し上げましたが」

ホステス付きのクラブの接待以外は定時で帰るくせに今さら何を言っているんだ!?

窓の外に目を遣る。
雪が景色を白く染め始めていた。

「今日は解散します」

「片桐!俺の言うことが聞けんのか」

ヤバい。待ち合わせを外にするんじゃなかった。

「今日は雪ですし。来月に持ち越しましょう。部長もお疲れ様です」

「片桐!」

俺は無理矢理アカマメを黙らせると部下を退室させ、廊下に飛び出した。




< 24 / 164 >

この作品をシェア

pagetop