略奪ウエディング
何故だか急に不安が心に広がり始めていた。
薄暗い空の下、雪に降られた状態で、女の子を一人待たせるなんて。
俺は何て浅はかだったんだ。
息を切らせて猛スピードで街灯の下を走り抜ける。
すれ違う人が皆、俺を珍しそうに見ている。
何故こんなに必死になっているのか、自分でもよく分からないまま俺は鞄を小脇に抱えて全力で走っていた。
約束の場所にたどり着くと、早瀬が俺の方を向いて白い息を吐き出していた。
「お待たせ、早瀬さん。ごめんね?遅くなって」
肩で息をしながら伝えると、彼女は今にも泣き出しそうな顔で俺をジッと見つめた。
その瞳を見ているとどうしてなのか、無性に早瀬をすぐに抱きしめて温めてあげたくなった。
その気持ちを全力で押さえ込みながら、彼女と冗談を言ったりして笑う。
すぐにでも、せめて暖かい場所に連れて行こうと食事に誘うが、早瀬はそれを拒否した。