略奪ウエディング
――「早瀬さん?」

声をかけられて二人でそちらを見た。

…あっ。

気付いてパッと起き上がり課長から身体を離す。

「東条さん」

私が言うと、課長がサッと立ち上がった。
そのまま深く腰を折って、お辞儀をする。

「あの?」

東条さんは訳が分からないといった様子で課長を見ていた。

課長は頭を下げたまま話し始めた。

「早瀬さんの上司の片桐悠馬と申します。お呼び立てして申し訳ありません」

「え…。上司の方?」

私はおろおろと二人の様子を見ていた。

すると突然、課長がその場にサッと座り込み、頭を床につけて土下座をした。

「課長!」

「え?え?」

私と東条さんはそんな課長を見て驚く。

「お願いです!婚約を破棄してください。彼女と結婚の約束をしました。俺が幸せにします。どうか彼女のことは忘れてください」

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