略奪ウエディング
――「梨乃~、今日は何食べる?」

お昼休み。
スミレが私に訊いてくる。

「あの、今日は私…」

「何よ。お腹の調子でも悪いの?」

口ごもる私の顔をスミレが覗きこむ。

どうしよう。言ってもいいのかな、課長とのこと。でも勝手にそんなことを話してはきっと課長の迷惑になる…。きっと大騒ぎになってしまうから。

「矢崎、ごめん。早瀬は今日は俺と行くから」

「え゛!?課長!?どういうこと?」

突然話に入ってきた課長を見上げてスミレは目を見開いている。

「課長、待って…。あのスミレ、違うの」

私は何とかさらにごまかそうと口を挟んだ。歩くスピーカーであるスミレに知れたら一気に会社中に広まってしまう。

「私、今仕事でね、課長に色々教えてもらってて」

「仕事?梨乃、何を言ってるんだ?」
課長が私の話の腰を折る。隠そうとしている気持ちが全然伝わらない。

「ちょ、課長。あの、だって」

私が何とか課長に分かってもらおうとしていると、スミレがポソッと呟いた。

「…『梨・乃』ですって…?課長、今…」

あ。まずい。


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