略奪ウエディング


そっと、唇を離してお互いの目を見つめる。

あなたの瞳に今の私はどんな風に映っているのだろう。
心から湧き出す愛を全身から滴らせながら、もっと欲しいと願う私はさぞや贅沢で貪欲な女に見えるだろう。

「朝から君は…俺の何を見ていたの?視線を合わせないことの訳にも気付かなかったのか」

キスの後の課長の伏目がちな表情が好き。
私を魅了するためだけにあるような錯覚を起こさせる。

「明日になったらどうなるのか不安だったのは、俺の方だよ。他の男のものだったという事実にすら嫉妬する。君のことを考えていたら仕事が手につかない。…幻滅した?」

「…いいえ。…しません。課長が、好きなんです」

彼はフッと笑って言う。

「そんな目で見ないで。午後から契約を取る自信がなくなる」

「…大丈夫です、きっと」

「他人事だと思って。その顔、他のやつの前でしないでよ?」

再び優しく重なる唇。これからもあなたにキスをされる度に私はこうしてどんどんあなたを好きになっていくのだろう。身体中の細胞が、あなたの色に徐々に染まっていくように。あなたなしではいられなくなる日は近いと、うっとりと目を閉じながら思う。
だけど、課長の方はいつになったら私を本当に好きだと思うのだろう。


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