略奪ウエディング

「あれ?早瀬だけ?ここの課は今日は休みなの?欲しい資料があったんだけどな」

その時、一人の人物が不思議そうに言いながら入ってきた。

「牧野くん」

お隣の営業第三課の同期、牧野くんが私の方へと歩いてくる。

「皆は飲み会なの。西口くんが大きな契約を取って」

「へえ?あいつが?そうか。やっぱすごいな、ここの課長は。西口はうちにいたときは不振続きだったからこっちに来たんだぜ」

彼は話しながら、私の隣のスミレの席に座った。

「そうなの?最近調子いいみたいよ。報告がいっぱい上がってる」

私は今、手元にある報告書を指差して言った。

「そうか~、あいつもいい師匠ができてよかったな。片桐さんにかかれば敵ナシだな」

「優しいのね、牧野くん。西口くんを心配して」

「何だよ、今さら気付いたのか。遅いよ~」

二人でケラケラと笑い合う。
牧野くんの軽快なノリに心がだんだんと軽くなるような気分だった。


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