略奪ウエディング
「でも今日は本当に驚いたよ。まさか早瀬とそんな課長が結婚なんてな」
彼の突然の話のふりに私はドキッとして彼を見た。
「もう聞いたの?」
「…否定しないんだな。本当なんだ。矢崎から聞いたから案外ただの噂かもって思ったりもしたんだけど」
牧野くんは苦笑いをしてから椅子の背もたれにガタッと身体を預けて天井を見た。
「牧野くん?」
「…ずっと…、好きだったんだけどなー…」
「え?何が?」
私が聞くと、彼は身体を起こして私を見た。
「早瀬がだよ」
「はい?」
私は一瞬、状況を把握できなかった。
好き?私?
「お見合いで結婚を決めたって聞いた時、もうお前を諦めようって思った。まさかそこをさらおうだなんて普通は思わないだろ。やっぱ格好いいよな、片桐課長は。彼ほどの男にしかそんな自信のある真似は出来ないよ」