略奪ウエディング

「あの、牧野くん…ごめんなさい」

どう言えばいいのか分からなかった。
だけど彼が余りにも寂しそうな声で打ち明けるから、まるで自分が悪いことをしているように思えた。

「や、やめてくれよ。ごめんな、何か。困るよな。言うつもりはなかったんだけど。忘れてくれ。
…幸せになってな」

時々こうして楽しく話す、気の合う同僚だとしか彼のことを思ったことはなかった。
片桐課長だけを見てきた私には、他の男性を見る余裕なんて全然なかった。

「うん、ありがとう」

無理に笑う彼の顔を見ていると、切なくなってくる。
私がもし、牧野くんの立場だったらどんな思いをするだろう。
課長に、他に好きな人がもしいたならば。

「な、なんだよ。泣くなよ。ごめんな」

牧野くんは泣き出した私の頭をそっと撫でる。
自分と彼を重ねて見てしまい、涙が止まらなかった。

ガタッ。

「梨乃」

その時、私を呼ぶ声がした。
二人でそちらを見ると、片桐課長が息を切らせてこちらを見ていた。


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