略奪ウエディング


「泣いてたね…」

しばらくしてようやく課長が口を開いた。

「別に、何でもないんです。私のことなら心配しなくても、もう終わりますから課長は飲み会に戻ってください」

わざと何気ない風に明るくふるまって言った。
泣いていた理由を聞かれないことを願って。

ふわっ。

え。

ギュッ。

課長が背後から私を抱きしめた。
首に巻きつく腕。肩に乗せられている頭。

サラサラとした髪から香る優しい匂いが私を包む。

「課長?」

私はそのままの体勢で課長を呼んだ。

「俺以外の男が、君を泣かせた」

課長が話すと、吐息が首筋にかかりゾクゾクする。

「違うんです。彼は何も…」

「梨乃の涙を牧野に見られたことがこんなに悔しいだなんて。俺、どうかしてるな…」

そんな風に話す課長の顔が見たくなり、首を課長の方に向ける。
その瞬間顔を上げた、課長の瞳が私の目の前で揺らめいた。

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