神様なんて信じないっ!~イケメンと妖怪、召喚しちゃいました~
うなずいてから急に恥ずかしくなって、うつむいた。
これじゃ、子供のころと同じ。
まだ帰りたくないと、泣きながらだだをこねた、あの頃と……。
「……それ、食べきれないのか」
四郎くんがリンゴ飴を指さす。
子供の頃は、このキレイな赤が体に悪い着色料でできているだなんて知らなかった。
大人になると、怖いことが増えていく。
知りたくないことを、知っていく。
「……行きたくない……」
こんなに楽しかったのは、久しぶりだったの。
「また、来られる。きっと」
四郎くんの声に、甘さが混じる。
あたしをなだめるときの、優しい声。
ゆっくりと首を横にふる。
「だって四郎くん、この時代の人じゃないもん。
1年後にはどこにいるか、全然わからないじゃない……」
自分でもなんでそんなことを言ってしまうのか、わからなかった。
飴で赤く染まった唇からこぼれ落ちた言葉は、宙に消えて。
二度と……戻らない。