異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「うわぁ……すごい!」
一面に広がる緑の絨毯に、思わず感嘆の声が出た。
「ユズ様が種芋にお力を下さったお陰で、芽吹きも問題なく成長も早くなりました」
農作業の手を止めて帽子を脱いだ農家の方が、わざわざ説明をしてくれて。申し訳ない気持ちながら嬉しくなる。
実は以前、この世界に来て厨房で初めて下働きをした時、ジャガイモの元気がないと思ったんだけど。そのお芋さんはこの地方で栽培されたものだったみたいなんだ。
もともとカルザス州は温暖な地域だけど、ことにこのメディテーク地区は暖かい。けど、降雨は少ない上に土壌は粘土があまり多くない砂壌土。その上酸性だから、ジャガイモの栽培に適しているんだ。
だけど、ジャガイモは連作障害を起こしやすいんだよね。
こちらの人たちはそれを知らずに同じ畑で同一品種ばかり育てていたから、大きな連作障害が発生して収穫量や品質の低下が起きてたんだ。
あたしは知ってる限りの輪作の方法や、害虫の被害拡大を防ぐ方法を伝えたけど。一番良いのは連作障害がない作物を作ること。
砂壌土の土地ならば、カブやキャベツなんかもいい。キャベツなら強い光が必要だから、日照量が多いこの土地によく合うはずだし。
それを村役場の農政課の人に話してみれば、「さっそく取り組んでみます」という答えが返ってきた。
「おやおや、僕の婚約者はパートナーの顔よりジャガイモを見ることに夢中みたいだね」
農家の人と土寄せと追肥について話してたら、ティオンにすねられて慌てて立ち上がった。
「し、仕方ないでしょう。ジャガイモの生産量を増やして、国内外に安く流通させなきゃいけないし」
「わかってるよ、ごめん。ジャガイモに焼きもち焼いちゃったんだ」
……だから、そういった事をサラッと言って人前で額にキスをしないでくださいな。ほら、皆さん固まっちゃってるよ。