異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



食堂と言えるダイニングでにこにこと朗らかな笑顔の壮年女性に勧められたのは、この地方で取れた新しい品種の豆を使ったポタージュみたいなスープ。

豆乳にも似てまろやかで甘味があっておいしかった。


「これは、とても美味しいですね」

「ありがとうございます。ユズ様に勧められた種類の豆の栽培もお陰様で軌道に乗って、妻が張り切って様々な豆料理を作ることが楽しいみたいなのですよ」


村長宅でご馳走になった夕食はどれもこれも美味しくて、ついつい食べ過ぎちゃいそうになる。


(ユズ、食べ過ぎよ)


侍女として同伴してきたキキに眉をひそめられ、ついでに耳打ちされた。


(ティオン殿下にあれを差し上げるんでしょう? あんまりがっついて失望させちゃダメよ)


……せっかく記憶の彼方に飛ばして消し去ろうと思ってたのに。何で余計な事を言っちゃうかな、キキさんは。


あたしはがっくりと肩を落としそうになりながら、何とか持ちこたえて笑顔を向けたけど。村長が何故か顔をひきつらせてましたな。


「なるほど。これだけ美味しければ、十分に商品化出来ると思いますよ」


ティオンが豆の粉で焼いたパンを手にしてちぎると、中は思いの外ふんわりしてる。豆粉を使った焼きたてのパンは、風味が豊かで美味しかった。


「ありがとうございます。殿下にお墨付きを頂けるとは、ありがたいことで……何も特産品がなかったこの町ですが、お陰様で名物ができそうです。ティオンバルト殿下とユズ様に感謝致します」


村長夫妻に感謝をされて面映ゆいけど、自分の拙い知識が少しでも役立ててよかったと思う。

すると、ティオンがこっそりとあたしに耳打ちしてきた。


「ほらね。君は一番大切なものをとうに得ているんだよ」

< 197 / 209 >

この作品をシェア

pagetop