異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
ティオンの言っていた意味がよくわからない。あたしは何を持っているんだろう?
だけど、彼があたしを励ましてくれたってことは解っていたから、村長宅の台所を借りて材料を前ににらめっこしてた。
あんなみんなに配った焼き菓子じゃなく、ティオンには特別な美味しいお菓子を食べて欲しい……と思ったから。
何でもない顔をしていたけど、きっと彼は相当な無理をしてこの小旅行を敢行したんだ。だって、侍従長がやたら耳打ちしていたし、書記官ともやり取りしているのを見た。
あたしの前では何でもない風を装ってたけど、陰では執務について話をしたり指示を出してるのは明らかだった。
さっきだって空気化のスキルを効かせてこっそり部屋を覗いたら、秘書官の持ってきた書類を眺めてたし。 村長や地方官僚ともあれこれ話をしてた。
……あたしの為にこんな大変さを見せようともしないで。
けど、ちょっとムッと来る。
心配させたくないのは解るけど、大変なら少しは大変だって素直に言って欲しいし。あたしに出来ることがあれば手助けするのに。
真綿にくるまれるように何も知らされず、大事に守られているのは心地いいかもしれないけど。あたしは嫌だ。
あたしはティオンを支えるって決めたんだから、苦しいことも辛いことも嫌なことも分けあってほしいんだ。
だから、コソコソ政務を取るティオンの部屋に殴り込み(?)を掛けるために、日本で見たレシピを思い出しながら、豆の粉を捏ね始めた。