異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「ユズもおいでよ。一緒に食べよう」
ソファに座っていたティオンが自分の隣をポン、と叩いたけど。流石に恥ずかしいですって。
「えっと……うん、あたしはこ、こっちでね」
自分のお茶も淹れてから、あたしは少しだけ離れて腰を下ろす。小さく笑ったティオンは、それ以上距離を詰めることもなくてホッとした。
それでも、何だか落ち着かない気分になる。
昼間は誰かがそばに着いてきたし。離宮では常に誰かの気配があって。こんなふうに郊外のお屋敷とは言え、正真正銘2人きりになったのはいつ以来だろう。
心臓の鼓動が速くてそわそわしたあたしは、静かな時間が耐えられなくて口を開く。
「あ……あの、ティオン。お仕事大変なの? あたしに手伝えることはないかな?」
「やっぱりバレちゃったか」
微苦笑したティオンはソーサーにカップを戻すと、あたしの方の背もたれに腕を伸ばした。
「大丈夫。緊急を要する案件や決裁が必要なものは全部終わらせたから。だから、明日はのんびりできる」
そう言いながらティオンはあたしの髪にそっと触れ、ゆっくりと撫でる。
「寂しい思いをさせちゃったなら、ごめん」
「ううん……それより。ティオンが疲れてないか心配なの。あたしの為に無理をしてるでしょう? 優しいのは嬉しいけど、無理をし過ぎは嬉しくないよ」
あたしはティオンの手を取ると、そっとその指先に目を向ける。
右手中指に出来たペンだこ。彼が常にペンを握ってる証拠のそれに、無意識に触れた。
「……あなたは頑張ってる。そんなに自分を追い詰めなくたって、誰もが認める立派な王太子殿下だよ。もちろん、あたしだって……この胸を張れるくらい素敵な婚約者なんだから」