異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「……ユズ?」
急に何を言い出したんだと思ったんだろうな。ティオンは戸惑った顔を見せた。
「ティオン、以前に言ってたよね?
“僕は……キレイなんかじゃない。汚いんだ。要らない存在なんだよ”って。
それから“……僕はお呼びじゃないのさ。生まれてからずっと……ね”って。
“父上や母上も群臣も……皆ライベルトを王位にと望んでる。それは痛いほど解ってる”って!」
あたしは思わずその手を掴んだまま、ティオンににじり寄った。
「言ったでしょう、あたし。ティオンは汚くもないし、あたしにとって大切な人だって。それに、あなたはもう十分に頑張ってきた。誰かと自分を比べなくたって、れっきとした王太子殿下になったんだよ。
だから、もう無茶しないで!」
ぽろり、と自然に涙が落ちる。数滴落ちたそれは、ティオンの指を濡らした。
しばらく呆然としていたティオンは、目を数度瞬いてからあたしをまっすぐに見た。
「……ユズ、思い出したの?」
彼の問いかけに小さく頷いた。
「ぜんぶじゃないだろうけど……ちょっとは。きっかけをくれたのはジャガイモさんだった」
お礼を言ったジャガイモさんの力添えのお陰で、あたしの奥底で眠っていた記憶の断片のリミッターが外れた。無理に引きずり出されたんじゃなくて、ごく自然に浮かんできたそれは。懐かしくて新しい。
……ティオンがあたしの呼んでいた“おでんくん”だったのはビックリした。
幼い頃に見た曖昧な夢の記憶。金髪の綺麗な王子様と遊んだ記憶は、きっと隠しきれなかった優しい思い出。
ティオンとあった全ては思い出せないけど、彼と縁があったことは素直に嬉しかった。