異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。
「それでも、まだ不安? あたしだけじゃ……無理かな?」
ティオンはほんの少し眉を寄せると、両手であたしの手を包むように取る。
そして、あたしの指先にそっとキスをした。触れた温かな柔らかさに、ドキンと心臓が跳ねる。
「……ユズ」
どこまでも澄んだ緑色の瞳が綺麗で。それでも甘くかすれた声に、思考が溶かされそう。心臓があり得ないくらい速くなってる。
「……君がいてくれれば、僕はそれだけで強くなれる。でも、君が力をくれるから、僕はもっと強くなれるんだ」
そして、そっと指先で落ちる涙を拭ってくれた。
「約束する。僕は君には無茶をしないって……だけど、君も無理をしすぎては駄目だよ?
民に配るお菓子のために徹夜しただろうから、今晩はゆっくり眠るといい」
ティオンの細い指先が頬を滑り、目元を優しくこする。やっぱりティオンには隠し事は出来ないな……と、降伏して少し笑った。
「大丈夫、そんなに疲れてないし。眠くないし……それより、みんなに手伝ってもらって助かったけど。半徹夜してもらって申し訳なかったよ」
たぶんクマが出来てる目元をあまり触って欲しくなくて、ティオンの指をさりげなく外させようと立ち上がった。
「お茶、もう一杯淹れるね。よく眠れるようにハーブもブレンドしたお茶だから」
ドキドキを悟られたくなくて急いでワゴンに触れた瞬間、カタンと何かが落ちる。それはティオンの足元に行って……箱の色を見た瞬間、全てが凍るかと思えた。
「ユズ、落ちた……」
「さ、さささ触らないでっ!!」
あたしが猛烈な勢いで取り戻そうとすれば、ティオンはニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。