Dear.
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ガタガタと震える手

怖かった

誰かが音もなく消えてしまうのが。

兄さんのようにまた誰かが死んでしまう事が



「武久さん大丈夫ですか?」



「え...?」


山南様の問いの返事でか細い声が出る


山南様は戦いに行ってはいない、どうやら私が来る前に腕に傷を負ってしまったらしくもう、二度と刀を振るうことは出来ないそうだ



「真っ青な顔をしています。」



困ったように笑って私を気遣う山南様



「え、あ..大丈夫、です。」



こんな時に気丈に振る舞えない、他人に迷惑をかけてしまう



兄さんが死んでしまった時もそうだった、気丈に振る舞えなくなって、何度も何度も死にたい、後を追ってしまいたい、と考えた



だけど、あの時は清光様が助けてくれた



だから、次こそは一人で耐えられる様に..と思っていたのに。



いざとなると、いつもこうやって弱ってしまうのだ



浅葱色の特徴のある羽織を纏い戦いに行かれた皆さん


願うば、誰一人欠けることのなく帰ってくること



「そんな不安がらないでください。

ああ見えて、皆さんお強いですから。」



和やかな、動じず、強い目で皆さんがくぐって行った門を見つめる山南さん



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