彼となら、   熱くなれる
「珠良?」

「は、はい?」

「気分は?」

「最低、何も。」

「ふ~ん、そうか、こっちはそうは言ってないようだが。」

兄の指がゆっくりと私を撫でた。

その余りにもゆっくりとした撫で方に、一瞬気が遠くなった。

そのままゆっくりとした動きが続いた。

小さな円を描くように動いた。

私は次第に脚が痺れるような感覚に戸惑った。

優しい動きに酔えた。

「こんなの初めて、もっと、もっと続けて、お願い。」

「いいよ、気の済むまで続ける。」

心地いい波が行ったり来たりして私を導いた。

といきなりビクッと体が震えた。

そのなめらか動きに一気に登りつめた。

私の口から今まで聞いたことがないような声が静かにもれた。

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