雪恋ふ花 -Snow Drop-

春人がやっと離してくれたのは、朝の5時だった。


二人で湯船につかりながら、珠は春人の胸の中でまどろんでいた。

「珠におぼれそう。”満足”なんて言葉じゃ、とても言い現わせない」

そんなことを耳元でささやかれ、珠は一気に目が覚めた。


「極上? 天下一品? 唯一無二? どれもしっくりこないんだ。一生、飽きることなんてないよ。もっともっと、開拓したい」

春人の言葉をさえぎるように、「もう、いいよ!」珠が口をはさむ。

「まだまだ、言い足りてない。もっと言わせて。珠、俺を選んでくれてありがとう。ずっと大切にする」


気がつくと、珠は泣いていた。

「泣き虫珠が出た」

春人が人さし指で珠の涙をぬぐう。


「ありがとう」


珠のその言葉には幾重もの想いが込められていた。


救い出してくれて…
いつも寄り添ってくれて…
好きになってくれて…
大切だって言ってくれて…
人を愛する喜びを教えてくれて…
こんなにも自分を愛してくれて…。



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