雪恋ふ花 -Snow Drop-
「なんでかわからないけど、大学でけっこう人気のある彼女とつきあうことになって、それまでの自分を全否定されて、彼女好みに改変されたんだ」
「え……」
「趣味にまでけちつけられて。男なのに、料理に詳しいとか、植物育ててるとか、編み物好きとかめめしいって」
「え? 春さん、編み物するの? あっ、だから、いつか手編みの帽子をすごいほめてくれたんだ」
「おかしいよね? 男のくせに、こんなの……」
「そんなことないよ。男とか、女とか、関係ないよ。今はそういう時代でしょ?」
春人は思わず、珠に見とれて、やわらかく微笑んだ。
「だって、すごいよ、朝からホットケーキ焼いてくれたり、弱った女の子を元気づけるためにバブルバス沸かしてくれたり。うれしかったよ、純粋に。それに、花も好きだし。ジャングルみたいなトイレはちょっとびっくりしたけど、私はすぐ枯らしちゃうのに、あんなに花に囲まれて暮らしてるなんて、うらやましいよ」
「そんなふうに、言ってくれて、ありがとう」
春人は優しく笑って、続ける。
「ずっととりつくろって生きてきたんだ。彼女に求められるままに男らしく、強く、たくましくって」
「そんなこと、できるものなの?」
「ぼろ、出てたかな?」
「ううん、そんなことない。確かにはじめと印象が違うなって、最近ちょっと思ってたけど。口調とかもだんだん変わっていったのは、親しくなったからなのかなって、思ってた」
「珠ちゃんだから、気を許してたのかも……」
そんなことを告げられて、珠は一瞬どきっとする。
「初めて会った時はどう思った?」
「うーん、ちょっと怖い人って思ったかな? すごい怒ってたから」
「あれは、小さい子を親がほったらかしにしてると思ったからで……」
珠はくすくすと笑いだした。
「そうよね。私達の出会いって、最悪だったのかも。でも、人間としての優しさみたいなものはにじみ出ていたよ。困っている人や弱っている人を放っておけないんでしょ? あんなに人のために怒ってくれるのも」
「まあね。でも、人に認められないって、つらいよね?」
「え?」
「今考えてみると、彼女とつきあっている間、ずっと背伸びして、無理してたんだなあって」
「好きだったんだね、その人のこと」
「あの時はね」