雪恋ふ花 -Snow Drop-

「さて、そろそろ出ようか?」

「うん」


珠が脱衣場で体を拭きながら、ふわあとあくびをしたのを見て、春人がクスリと笑った。

「ごめん珠。眠いのはわかってるんだけど、俺はまだ”満足”していないんだ」


その言葉を聞いて、珠はギョッとした。

「だって、さっき…」

「ああ、あれね。あれは、”質”の話ね」

「どういう意味?」

「昨日から二人で過ごした濃密な時間そのものには、何の文句もないよ。それは、さっき言ったとおりだから。今、言ってるのは、”量”の問題ね」

「りょう?」

頭の中でうまく変換できなかった珠が尋ねる。


「そう、あんまり良すぎて、まだ足りてないんだ。悪いけど、もうちょっと、つきあって」


こうして、珠が抗議する間もなく、もう何回目かわからない、熱い時間が始まった。

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