家のしきたりで愛のない結婚をしただなんて、よくある話だ。

私たちは、そんな“よくいる冷めた夫婦”の一組に過ぎない。

愛なんて必要ないと、思っていたのに……、
彼に不倫疑惑が浮かんだ瞬間、何かがぷつりと切れてしまった。

「私と離婚してください」

「……は?」

「もう、あなたと一緒にいたくありません」

“ある秘密”を打ち明けないまま、私は夫にサヨナラをした。


代々受け継がれてきた著名な流派の華道家
葉山 花音(はやま かのん) 二十六歳

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高級ホテル経営を手掛ける代表取締役社長
三鷹 黎人(みたか れいと)三十三歳


古いしきたりに縛られた結婚から解放されて、きっと彼も喜ぶだろうと思っていたのに……。


「離婚はしない。……お前が欲しくなった」

「離れて行くと思ったから……手離し難くなっただけですよね?」

「手離すのが惜しくなったんじゃない。離れて行く間際しか、花音の本音が見えなかったんだ」

「え……?」

「どうしたらいいか、俺も分からない。分からないけど、今花音を離したくない……」


どうしてそんなに、苦しそうな顔をするの。

今日も本音を隠したまま、私たちは距離を埋められずにいる。

あなたを本当は愛していただなんて、一生、伝えてやらない。



「俺が欲しいと言え、花音ーー」



あらすじ

超一流の華道家の一族に生まれた花音は、大手財閥の代表・黎人と政略結婚した。冷め切った結婚生活を送っていたけれど、ある日彼に歩み寄ろうと決意する。しかし、黎人には女性の影があることが発覚してーー。ショックを受けた花音は即離婚を決意するも、子を身ごもっていることが分かってしまい…。子のことは明かさずに離婚を言い渡した花音だけど、黎人は意外にも離婚を拒む。それどころか冷たい態度の花音を溺愛しだして…。

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離婚  政略結婚