舞う風のように
刀に着いた血を振り払うと、奥の閉じられた一室に目を向けた。
気配。そして強い殺気を感じる。
気付くようにわざと気配を隠していないのだろうか。
強い。本能でそう感じた。
ゆっくりとその部屋へ向かう。
襖に手をかけ、
スパーーーーーンッ!!!
普段土方さんにするように、思いっきり開いた。
その向こうで佇む人物に、思わず息を飲んだ。
月明かりを浴び、静かにこちらを見る男。
堂々とし、こちらを見据える男は何故だろう。
少し笑みを浮かべている。
彼は、新選組で言うと、平助に似た細身の体。
身長は、斎藤より少し小さいくらいか。
真っ黒でさらさらな、だが少し襟足の長い短髪。
少しつり上がった切れ長の、紫がかった二重の不思議な瞳。
すっと通った鼻筋に、形のいい薄い唇。
背筋の伸び、黒い着流しを纏った彼は、俺と同じくらいの年なのだろう。
だが…凄く妖艶で…美しかった。