謝罪のプライド


 亜結に指定された店は表通りから路地を入ったところにある落ち着いた感じのバーだった。入るとすぐ見える位置のカウンターで二人は肩を寄せあって飲んでいた。


「あ、初音。こっちよ」

「こんばんは。……すみません、突然お邪魔して」


清水さんに頭を下げると、彼は温和に笑い私に席に座るように言った。


「いえ。この間ゆっくり話せなかったから、嬉しいですよ」

「あ、あの時もすみません」


私ってば、迷惑かけてばっかりじゃん。
それなのに嫌な顔もせず暖かく迎えてくれるなんて、なんてイイ人。

入り口に近い方から私、亜結、清水さんの順に座る。
少し遠いけど、清水さんは一生懸命私に話しかけてくれた。


「初音さんは亜結とは高校からの友達なんですってね」

「はい。腐れ縁なんです」

「そうそう。よく面倒みてあげたわぁ」

「よく言うー。こっちだって亜結の揉め事の仲裁、何回したと思ってるの」


清水さんはあまり自己主張が強くないのか、私達だけで話がドンドンそれていっても気にはしてないみたい。
ニコニコ笑いながら、私達の話に耳を傾けている。

昔なら完全に『良い人だけど……』で終わりそうなタイプだけど、結婚するならやっぱりこんなタイプとが幸せなのかなぁ。


ああなんか、結婚前提で男の人を観察しちゃうのってババ臭いな。


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