謝罪のプライド


 謝るべきか否か。
私はそれをずっと考えていた。

浩生からはその後何の連絡もない。

きっと怒っているのだろう。
どうして私が先に怒ったのに怒られ返されなければならないのだ。
逆ギレだ、酷い。

でも、こういう時は惚れてるほうが弱い。

だからこそ私は迷っている。
自分が折れるべきかどうか。

浩生からは折れて来ないのがわかっているから。




 そんな風に悩んでいた日曜日の午前中、数家くんからメールが届く。


【今度夏向けの鍋を始めるからまた食べに来て】


「夏に鍋ねぇ。冷たい鍋なのかなぁ? ……ふふ」


ようやく少し気が紛れて笑えた。
そして笑えたと思ったら、途端に泣けてきた。

うわぁ、情緒不安定。
私、かなりテンパってるかもしれない。

誰も居ないからいいかとしゃくりあげながら、メールの返事を打つ。


【夏用の鍋って想像付かない。楽しみ】


普通を装った自分が、電波に乗る。


【かーなーり美味しい。美容にもいいからオススメだよ。】


すぐに戻ってくる数家くんのやっぱり普段通りのメールに、なんでか少し癒やされた。

普通が一番。
恋人と喧嘩するのも普通のことだよね。私おかしくないよね?

きっと、……普通に仲直りも出来るよね?

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