謝罪のプライド


 十五時頃、仕事の合間にシステム開発部を覗く。今日初日を迎える美乃里のことが心配だったからだ。


「あら、新沼さん」

「こんにちは、沢木さん。……彼女どうです?」


沢木さんは私がシステム開発部にいた時に面倒を見てくれた人だ。ここは割に女性が多くて、今は沢木さんも女性管理職として活躍している。


「そうね。まあ、初日だから」


ちらり、と彼女が後ろの席を見る。美乃里はパソコン前で突っ伏していた。周りの人が嫌そうな視線を向けているのをみると、こっちまで心苦しくなる。


「すみません、ご迷惑かけます」

「新沼さんが謝ることじゃないわ」

「ちょっと、今声かけてもいいですか?」

「そうね。ちょっと落ち込んでるから、あなたと話せば元気になるかも」


だといいけどね、と思いつつ美乃里に近づく。


「あ、新沼さぁん」


パッと顔を上げた美乃里はにへぇと微笑んだ。
あれ、落ち込んでるんじゃなかったのかよ。


「どう? システム開発部は」

「技術部の上を行く難しさですぅ。私、ここは向いてないなーって思っちゃう」


それが本気だとしても、その部署内では言わないで。
ああもう、変なとこは空気読まないんだから。

< 119 / 218 >

この作品をシェア

pagetop