謝罪のプライド
「数家くん、私」
『喧嘩したのは、良いきっかけだと思えば? 新沼さんはずっと嫌われるのが怖かったんでしょ? これ以上悪くなることなんかないよ。そう考えたら、もう何も怖いものなんてないでしょう』
「数家くん……」
『彼にどう思われるかとか考えずに、自分の気持ちを伝えたらいいんだよ』
私の気持ち。
美乃里を好きにならないで欲しい。
私と結婚したいと言って欲しい。
謝って、特別だって言って欲しい。
要求ばかりのこの気持ちの根本にあるものは何?
声に出そうとしたら唇が震えた。
自分を好きだと言ってくれる人に気付かされるなんて。
……気付かせてくれるなんて、やっぱり数家くんは優しい。
「私、……やっぱり浩生が好き」
結婚出来なくても、理不尽に悩まされても、他にこんなに素敵な人が現れても。
私はどうしようもなく彼が好きで、今も尊敬している。
漠然と幸せになりたいんじゃなくて、彼と幸せになりたい。
私が本当に欲しいのは、彼の隣に居る権利で。
彼に愛されてる自信だ。
『うん』
「数家くん、ごめん」
『……うん』
電話の向こう、数家くんは小さく笑う。