謝罪のプライド
「……私、さっき、沢木さんと塚原さんが話してるの聞いちゃったんです。ついに九坂さんが謝ったって。それも、新沼さんの頼みで」
「そ、……そう」
沢木さーん。何広めているのよ!
つか、何?
私は社内恋愛を内緒にしてたつもりだったのに。
これじゃ塚原さんにまでバレちゃうじゃん。
「これは無理だなって思いました」
美乃里は寂しそうにポツリと呟く。
「それは……分からないよ。坂巻さんが頼んだとしても、彼は行ったかもしれない」
美乃里は小さく首を振ると立ち上がった。ふわりと彼女のスカートが揺れる。纏わりつく全てを振り払うように。
「しませんよ。それくらいは分かります」
「坂巻さん」
「ま、九坂さんストイックすぎるし。私とは合わないんだなって思いました。失恋には新しい恋ですし、目先を替えてみますね、私。じゃ、失礼します!」
慰め役が言うはずのセリフを自分で元気に宣言し、スカートを翻して美乃里は会議スペースを出て行った。
したたかで女の子らしくて。あんなにシッチャカメッチャカに私をかき回してくれたのに。
……不思議な子だわ。私は結構美乃里が好きかもしれない。
彼女の言葉の余韻に浸りながら、私も少しだけあんな風に変わりたいと思う。
今の自分は嫌いじゃないけど、好きじゃないところもたくさんある。
余計なプライドとか意地とかを削ぎ落としたら、あんなふうに身軽に飛べるのかもしれない。