謝罪のプライド

紙コップをくしゃりと潰して、立ち上がろうとしたとき私を呼ぶ声がした。


「初音」


いなくなった美乃里の代わりに見えるのは、男性の足だ。


「浩生?」

「19時にロビーな」


顔を上げた時には、彼はそっぽを向いて歩き出していた。


「待って浩生」


浩生の背中に声をかけると、彼は立ち止まった。


「今日はありがとう」


心からのお礼を言うと、返ってきたのは小さな笑い声。
振り向いた浩生は、久方ぶりに見る笑顔だった。


「お前の頼みだからな」


強く握りしめられたみたいに、胸が苦しかった。
好きって感情はたまに暴力的で、どうしようもない衝動で私を脅かす。

今すぐ彼の背中に飛びつきたい。
追いかけてキスがしたい。

それを押さえつけるのに、どれだけ必死だったかはとても言葉に出来ない。
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