謝罪のプライド


そわそわしながら時間の経過を待った。
まるで時計に片思いしているみたいに、五分に一度は壁掛け時計をこっそり見てしまう。

十分前にデスク周りを片付けて、化粧室でお化粧直しも済ませる。
よし完璧、と思えたところでようやくエレベーターに向かった。

そして、店じゃなくてロビーなのか、と気づいたのはエレベーターに乗ってからだ。

いつもなら待ち合わせは必ず店の前だった。
ロビーなんて人に見られるところを指定してくるなんて珍しい。

人に見られたら噂になるかしら。
なんて心配になりつつ、もうそんなことを気にしているのも馬鹿らしくなってきていた。

私は浩生が好きなんだ。
付き合ってるんだからなんで隠す必要がある?

浩生が言うように、私は今まで周りを気にしすぎだったのかもしれない。
少しは美乃里を見習って、時には大胆になったほうがいいのかも。


体に僅かに重力がかかったかと思うと、チンという軽快な音と同時にエレベーターの扉が開いた。

視線の先にはビルの出入口があり、ほとんどの会社員がそこを目指して足早に歩いて行く。
そんな中、植え込みの近くの壁に寄りかかっている浩生は一際目を引いた。


「浩生」

「遅いぞ」


彼は眉をひそめて言う。
いやいや、時計は今十九時ですから。

< 161 / 218 >

この作品をシェア

pagetop