謝罪のプライド
「時間通りだよ」
「俺はもっと前に来てた」
なんじゃ、その理屈。
いつもならムカつくところだけど、今日は気分が高揚しているせいかそれほどでもない。
軽く睨んだら睨み返されて、それが可笑しくて笑ってしまった。
「……今日は機嫌いいんだな」
ふ、と笑われて、心臓が騒ぎ出す。
私は、まず一番に謝りたいことを告げた。
「この間は、……信じなくてごめんなさい」
「信じる気になったのか?」
「うん」
彼に促され、一緒にロビーを出る。
かつやのある通りに向かって歩き出しながら、私は彼に微笑みかける。
「よく考えたら、浩生が謝らなかったってことは浮気はしてないんだよね」
数歩歩くと、隣の浩生がいなくなった。というか、彼は少し後ろで立ち止まっている。
驚いて振り向くと、浩生の方まで驚いた顔をしていた。
「浩生?」
呼びかけると、彼の眼差しが柔らかくなる。
その眼差しが与えるときめきが、私の胸に波紋のように広がっていく。
「いや、何でもない。……今日は話すよ。だからお前も話せ」
「私?」
「あの鍋屋の男は誰だ。何故俺に内緒にする」
今度は眉にシワが寄る。今日の浩生は凄く表情が豊かだ。
前髪がくっつきそうなほど近づかれて、私はドキドキし過ぎて挙動不審になる。