謝罪のプライド
おばさんは思い出したように奥にはいっていったかと思うと何やら小さな包みを持ってきた。
「これ」
それは鶴が刺繍された豪奢なケースだった。
開くとそこには、昔ながらの爪付きデザインのダイヤモンドの指輪が鎮座している。
「浩ちゃんのお母さんの婚約指輪よ。……お父さんが再婚するときにね、無理言って私が形見分けしてもらったんだ」
「へぇ。知らなかったな」
浩生も顎をさすりながら覗き込む。
「いつか浩ちゃんのお嫁さんになる人にあげようと思っていたんだよ。ね、これ、貰ってもらえるかな」
「おい、おばちゃん」
「え、……いいんですか」
浩生にとってもお母さんの大事な形見の品だ。
嬉しいけど。……いいのかな、私が貰っても。
私がためらっている内に浩生がそれを奪い取る。
「こんな古いもんいいよ。初音は初音だ」
「でも浩生、私嬉しいよ?」
婚約指輪は要らないって最初に話していた。
目立ちすぎて会社ではつけれないし、結婚指輪を貰ったらもうつけなくなるって話も聞くし。
だから、その代わりにもらうのならいいのかなって思ったんだけど。
「いいから、これは俺が預かっておく」
そのままポケットにしまわれてしまっては、もう何も言えない。
浩生にとっても大事な物だし、自分で大切にとっておきたかったのかもしれない。