謝罪のプライド

「なんでよ。初めてなんだから怖いもんは怖いじゃん」

「自分から子供つくろうって言っておいて、言えないよ」


ああ。
なんとなく分かるけど。
私達ってその辺りは似たもの同士だ。


「じゃあ、別の言い方すればいいじゃん。妊娠は怖いけどあなたは欲しいって」


みるみるうちに真っ赤になる亜結。これは一本とれたかもしれない。


「……いつからそんな恥ずかしいセリフ吐けるようになったの、初音」

「浩生は言わないと言ってくれないってことに気づいてからよ」

「いや、無理。私は言えないわ。下手になんて絶対に出たくない」

「アンタ年下なんだから甘えればいいじゃないのよ」

「嫌よ。あの人が私に惚れて結婚したっていう立場を守りたいのよ」


何のためにだ。
亜結って変なところでプライド高いんだから。


「つまりお願いされたいんだね? 子供が欲しいって」

「……違う」

「ナマでしたいと」

「違う! 具体的に言わないでよ、恥ずかしい!」

「じゃあ何よ」


呆れたようにそっけなく告げると、亜結は少しひるんで、おずおずとグラスに付いた水滴をなぞり始める。


「……結婚したんだし、たまには冷静じゃなくてもいいのに……ってことよ」

「つまり情熱的に求められたいと」

「……そうさせる魅力も枯れちゃったかな、とか。私、ちょっと太ったしさ」


声が尻すぼみ。
これはあれだね。
相手から告白されて付き合ったけど、自分のほうがもっと好きになっちゃったっていう面倒くさいパターンだね。


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