謝罪のプライド
そんなある日、ヘルプデスクからクレーム処理の依頼が入った。私は九坂さんの後ろで出来るだけおとなしくしていたけれど、取引先のお客様はとても苛立っていて、障害に至るまでの経緯を滔々(とうとう)と話し続けた。
九坂さんは多分半分くらいは聞いてなかったと思う。どう考えても文脈のおかしいところで話を切り、ヘラリと笑う。
「ご迷惑をお掛けしましたね。今日中に直します。お任せください」
“すみません”の言葉はなく私は思わず九坂さんを二度見してしまった。
苛立っているお客様も、九坂さんの態度にムッとした様子を見せ、顔を硬直させたまま障害のあったマシンの前まで連れてこられる。
九坂さんはその後、コンピュータを分解して内部を確認し、電源を立ち上げて何かを確認したりしていた。私には全容は分からなかったけど、おそらくは原因と思われる現象を一つ一つしらみつぶしにしていたのだろう。
「部品交換だ。持ってきていたよな」
「はい!」
出掛けに預かった鞄には、必要になるであろう部品が予め用意されていた。彼はそこから必要部品を探し出し、手早く取り替える。
そしてまた電源を入れてチェック。一連の作業が凄い速さで行われる。
彼は問題判別力に優れているのだろう。いつまでも同じ所では迷っていなかった。ある程度で見切りをつけダメそうなら部品交換する。自分の技術力にこだわりすぎていたらそれは逆に出来ないだろう。自信ありげでありながら流動的に対応出来る彼が凄いと本気で思った。