謝罪のプライド
「俺は彼女の昔の同級生です。彼女がお客様として店に来てくれてから、色々相談に乗ってるんですよ。何を考えているのか分からない彼氏のこととかね。知ってます? 彼女があなたとの関係に不安を感じているの」
男はわざと煽るように語ってくる。
乗ったら負けだと思うけれど、話す内容に苛立ちは隠せない。
「お前に言われる筋合いはない」
「筋合いはあるんです。俺、新沼さんのこと好きなんで。彼女をあんな風に泣かせるなら、さっさと別れてくださいよ。俺、あなたより彼女を幸せにする自信もありますよ?」
飄々と言われて、余裕なんかどこかにいった。
脇の壁に拳を強く叩きつける。固い音とともに手にはしびれが走った。
反論を考えるも、珍しく頭に血が上っていて何も思いつかない。
男は息を呑んだまま俺を見続ける。
静かな物腰の男だが、神経は相当太いだろう。
この状況で俺を煽ってくる辺りでそれは分かる。
度胸があって、愛想も良くて。
だから初音もきっとこいつに心を許して色々話しているんだろう。
俺に言えないようなことも。
……なんだよ。
確かにこいつの言う通りじゃねぇか。
初音には、こういう男のほうが合っているのかもしれない。
拳の痛みが心にまで伝わってきたみたいに、ジクジクと痛み出す。
俺は黙ってその場を離れて、その後初音にも連絡できなかった。