風の詩ーー君に届け
「灯を遮る人影に気付き、『匿ってくれ』と声をかけようとした……。

が、声をかける前に詩月は背負ったヴァイオリンを弾き始めた」



「5年前……」



「澄んだ音色は……震えていた。

自信無さげで頼りない、だが心洗われる音色だった」


人前で演奏することを恐れていた時期、その演奏の様子を聞くのは理久も初めてだった。



「聴こえてきたメロディーは……レッド・ツェッペリンの『(Stairway to Heaven)天国への階段』、意外だった……」



「ロックですか?」


訊ねる安坂の声が裏返っていた。



「悪魔崇拝、あるいは作られた当初の時代や社会を批判したとまで噂される歌詞のついた曲。

何故……詩月があの時、その『(Stairway to Heaven)天国への階段』を弾いたのか……不思議だったが」



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