ねこにごはん【完】
「あの……手伝う、ってどういうこと?」


訊けば本来美化委員を務めている奈良くんが先日の部活で脚を負傷してしまい、現在は松葉杖に頼っている状態だとか。
なので菊地原くんが奈良くんにお昼ご飯を奢ってもらうのと引き換えに、しばらく当番の代理を担うことになったらしい。
これは予期せぬ好都合な展開である。

あの菊地原くんとこんな形でお近付きになれるなんて、願っても無い好機が訪れてくれたものだ。
不謹慎なことを言うが、怪我をした奈良くんには感謝したい。
彼と当番のペアを組んでいて本当に良かった。


「あ、えっと。それじゃ、じょうろに水いれてきてくれるかな?」


私が空になったプラスチック製のじょうろを差し出すと、菊地原くんは癖のある髪をいじっていた右手でそれを受け取り、同時に左手に持っていた食べかけのメロンパンを私に差し出してきた。


「持っててくれると助かるな~」


そうお願いされて、私は両手でメロンパンを受け取る。
てくてくと水道の方へ歩いて行く菊地原くんを目で追いながら、私は自分の顔がにやけていくのを感じた。
つい歯型のついたメロンパンをぎゅっと握ってしまったら、少しだけ潰れてしまった。
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