調導師 ~眠りし龍の嘆き~
卑怯だ。

許せるはずがないだろ。

向き合えるはずがないだろ。

頼むからここから出してくれ。

これ以上怒らせないでくれ。

握り締める拳。

爪が肉を抉るほど強く。

突然、母が首にかけていたお守りを外そうと動いた。

「何をっ…」
「愛理っ。
出来るでしょっ?」
「はいっ」
「???っ」

愛理の手にお守りが渡る。

そのまま父の手に握らせるように手ごと両手で包む。

強い波動を感じた。

不思議な感覚が部屋を包む。

そして。


《すまなかった。
武……》


聞こえたのは紛れもなく父の声。

謝罪の言葉。

呆然と父を見下ろす。



《許してくれ。
お前に何もしてやれなかった私を。
一族の力の事しか見ていなかった私を。
愚かな父を許してくれ》


「っなっ……」

《お前の愛した人を殺した。
それは紛れもない事実。
お前に殺されるならと思っていた。
あの日から忘れたことはない。
自分でもなぜあのような事をしたのか分からない。
言い訳にしかならないだろう。
事実は変わらない…》

「っ当たり前だっ。
妻を返せっ。
……兄さんを返せっ。
あんたが殺したんだっ」

《そうだ…。
力を増幅させる為の薬を、猛に飲ませた……。
あんな事になるとは…。
すまなかった……》

「っあっ謝って済む問題じゃないだろっ!
今更善人ぶったって変わらないっ。
父親とさえ思えないっ!!
そんな事も分からないのかっ!!」

勝手だ。

許せるはずがない。

こんな勝手が許される訳ない。
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