調導師 ~眠りし龍の嘆き~
「死んで許されるなんて思うなよっ?!
俺は一生忘れないっ。
あんたを許さないっ!!」

もう喋るなよ。

鬱陶しい。

信用できるものか。


《ありがとう。
すまなかった…》

「っ……!!」

何だ。

ありがとうって…。

何を言うつもりだ。

もう止めてくれ。

これ以上聞きたくない。


《……ありがとう。
最期に会えてよかった。
お前に看取られて逝けるとは…。
忘れないでいてくれ。
お前の中で生きていられるなら、こんな幸せなことはない…》


何を言っている。

何なんだ。

誰だこれは。



《……いして…る……。
…たし……たいせつ…すこ…。
……りが……う。
タケシ……》


遠のいていく声。

呼吸を止めた身体。

勢いよく襖を開けて走る。

後ろも見ずに走る。

目的の場所。

部屋の襖を乱暴に開けて中に駆け込む。

誰もいない部屋。

随分と使われていなかった部屋。

昔と変わらない自分の部屋。

座り込む。

畳を拳で何度も叩く。

「ふぜけるなっ!!
くそっ。
くそっ!!
クソッ!!!!」

最期まで勝手なやつだった。

聞きたくなどなかった。

けれどしっかり届いていまった。


『愛している。
私の大切な息子。
ありがとう。
武……』


何てやつだ。

息を引き取る寸前までこちらの予想を裏切る。

愛しているって何だ。

大切な息子だと?!

ふざけるなっ。
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