調導師 ~眠りし龍の嘆き~
そして、帰ってきた。

愛した妻。

愛しい息子。

それは、物言わぬ亡骸であったけれど。

見つけた時には不思議な心地がした。

嬉しい。

悲しい。

現実を再び突きつけられた。

あの時から時間を止めて眠る亡骸。

ようやっと手の届く所に来られた。

それは、長年の望みでもあった。

骨さえも手元に残らなかったと嘆いた日々。

全てが一気に押し寄せてきた。

感情。

記憶。

葬儀の時。

涙は止めどなく流れた。

自分の水分全てが涙になったように。

何もする気が起きなかった。

嘆く事ももう充分。

顔を見る事ももう充分。

根が生えたように動けない。

この先何もできないかもしれない。

そうしてやっと行動する気になったのは、孫娘のおかげだ。

支えてくれている。

それは力になった。

また生きる糧になった。

いつだって支えられる。

それは、妻であった。

娘であった。

息子であった。

そして孫だった。

愛しい存在は、いつだって救ってくれるのだ。

そして今……。

「そんじゃ。
行ってまいりまーす」

駆け出していく最愛の孫娘。

「やれやれ」

はしゃぎ過ぎなければいい。

まあ、楽しんでくれれば。

「さてと……。
わしも、出掛けるか。
京子ちゃん。
今日はもう閉めるぞい」
「わかりました。
閉めておきますので、出掛けて良いですよ」
「そいじゃ、頼む」
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