調導師 ~眠りし龍の嘆き~
優しい娘。

愛しい我が子。

こうして今の関係があるのは、不本意ではあるが、父のお陰だろう。

あの時の事件がなければ、こうはなっていない。

きっと、娘の存在すら忘れてここに立っていただろう。

忌まわしい出来事。

けれど、娘と出会うきっかけとなった。

運命とは不可思議だ。

時には残酷に牙を剥く。

時には優しく導く。

悲しみ。

怒り。

喜びと幸福。

一度に全てを連れてくる。

そんな世界を、今は静かに受け止めることができる。

年を取ったと言う事なのだろうか。

それは寂しくもあり、嬉しくもある。

今の自分を誇らしく思う。

「永久に。
永遠に……」
「……お兄様の言葉ですわね…」
「?知っているのか……?」
「お父様の大事になさっているお守り。
以前触れましたわ。
教えてくれました」
「……そうだったか……。
この言葉だけは、色あせる事がない。
まるで心に焼き付けられたように離れない。
消えない。
…嫌ではない。
だが、最近は以前思っていたものとは違う意味として感じる」
「違う意味?」
「ああ。
永久に……どんなに時を経ても変わらない。
永遠に、続いていく想い。
わしが死んでも変わらずに、想いは残る。
人が死に絶えても、そこに宿る。
それは、物にかもしれん。
時代にかもしれん。
だが、確かに残るんじゃ。
変わらずに……」

何かは残る。

人の中に。

次の世代に。

そして、皆同じ考えに辿り着く。

長い時間をかけて。

死んだ者達の意思を受け継ぐ。

望むと望まざる関係なく。

想いは宿る。

そこに存在した想いを感じる。

明確に分からなくても良い。

感じるのだから。
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