専務が私を追ってくる!
複雑な気分だ。
社長は高校時代、母のことが好きだったらしい。
もし奥様がそのことを知っているとしたら、恋敵の娘が息子の秘書をやっているなんて、気に入らないに違いない。
ますます怖くなってきた。
「生憎ですが専務は外出しております。私でよろしければ、ご用件を承りますが」
「そうね、お願いするわ。これ、修に渡しておいてくれない?」
奥様はシャネルのバッグから何やら空色の封筒を取り出した。
受け取ると、中に硬い冊子のようなものが入っているとわかる。
結構重い。
「中身が何か、うかがってもよろしいですか?」
「お見合い写真と釣書よ」
おっ……お見合い?
そういえば、母親が見合いを勧めてくるのが面倒で独り暮らしを始めたと聞いた。
息子に見合いをさせたいからって、まさか母親自ら職場に乗り込んでくるなんて。
それだけ彼女は本気なのだ。