専務が私を追ってくる!
「久美子にとって、修はまだまだ末っ子の甘えん坊なんだ。手をかけたくて仕方ないんだろうね。孫もいるのに、子離れできてないのかな」
修にはお姉さんが一人いる。
専業主婦をしており、N市内に住んでいると聞いたことがあった。
「奥様の気持ちお察しします。だって専務は本当に……」
家では甘えん坊の末っ子体質ですから。
……と言いかけた。危なかった。
「え?」
「いえ。本当に、可愛がられている感じが伝わりましたので」
「ははは、そうだね」
社長は社内でも愛妻家で有名だ。
市内の公園で二人が手を繋いで散歩しているのを見たとか、社長が奥様へのプレゼントについて女子社員に相談していたとか。
入社して間もない私でも、奥様とのラブラブエピソードを何度も耳にしたことがある。
気は強いけれど、きっといい奥様なのだ。
エレベーターに乗った社長を見送って、専務室へ戻る。
その途中で北野副社長の秘書の一人とすれ違った。
背が低くてメガネをかけているこの方は、確か山田さんだ。
「お疲れ様です」
と頭を下げたが、彼はにこりともせずに、
「どうも」
とぶっきらぼうに告げ、足早に去っていった。
まただ……。
修の秘書になってからずっと思っていたが、副社長の秘書たちは、私に冷たい。
山田さんだけでなく、背が高くて鼻も高い水野さんもそうだ。
挨拶はこんな感じだし、まともに目も合わせてくれなかったりする。
嫌われているのだろうか。
同じ秘書でも、社長秘書の園枝さんはよく声をかけてくれるし、相談に乗ってくれるのだが。