専務が私を追ってくる!

「久美子にとって、修はまだまだ末っ子の甘えん坊なんだ。手をかけたくて仕方ないんだろうね。孫もいるのに、子離れできてないのかな」

修にはお姉さんが一人いる。

専業主婦をしており、N市内に住んでいると聞いたことがあった。

「奥様の気持ちお察しします。だって専務は本当に……」

家では甘えん坊の末っ子体質ですから。

……と言いかけた。危なかった。

「え?」

「いえ。本当に、可愛がられている感じが伝わりましたので」

「ははは、そうだね」

社長は社内でも愛妻家で有名だ。

市内の公園で二人が手を繋いで散歩しているのを見たとか、社長が奥様へのプレゼントについて女子社員に相談していたとか。

入社して間もない私でも、奥様とのラブラブエピソードを何度も耳にしたことがある。

気は強いけれど、きっといい奥様なのだ。

エレベーターに乗った社長を見送って、専務室へ戻る。

その途中で北野副社長の秘書の一人とすれ違った。

背が低くてメガネをかけているこの方は、確か山田さんだ。

「お疲れ様です」

と頭を下げたが、彼はにこりともせずに、

「どうも」

とぶっきらぼうに告げ、足早に去っていった。

まただ……。

修の秘書になってからずっと思っていたが、副社長の秘書たちは、私に冷たい。

山田さんだけでなく、背が高くて鼻も高い水野さんもそうだ。

挨拶はこんな感じだし、まともに目も合わせてくれなかったりする。

嫌われているのだろうか。

同じ秘書でも、社長秘書の園枝さんはよく声をかけてくれるし、相談に乗ってくれるのだが。


< 151 / 250 >

この作品をシェア

pagetop