専務が私を追ってくる!

やっぱり三原則は正しかった。

恋愛なんて、してはいけなかった。

『過去の自分を恥ずかしいと思うのは、既に成長したっていう証拠だ』

修がそう言ってくれて、私の性格は良くなったのだと思っていたけれど、完治したわけではなかった。

過去を恥じたことによっていくらかマシにはなったのだろうが、ちょっと成長した程度で直るような性格ではなかったのだ。

でも、今それに気付いたからといって、修と別れるなんてことは絶対にしたくない。

今の幸せを手放したくない。

押さえ付けるんだ。

心の中で暴れている嫌な私を。

「じゃあ俺、S市の営業所で打ち合わせがあるから」

使っていたノートとパソコンをバッグに詰め、修が立ち上がる。

「あ、はい。行ってらっしゃい」

見送ろうと私も立ち上がるが、修は扉ではなく私のそばへと向かってきた。

「それが終わったら今日は何もないし、ここには戻らず早めに帰るよ」

そう言って腰に手を回す。

「だから、そういう話は……」

会社ではダメだって言ってるのに。

修は咎めようとする私の唇にチュッと軽いキスをして、私に怒られる前にバタバタと部屋を出て行った。

それだけで暴れていた心の奥が静かになる。

会社でキスしちゃった。

ダメだけど、ものすごく嬉しい。

私の悪心は今、修から与えられる愛で封印を保っている。

修のせいで心が暴れ、修のおかげで鎮まるのだ。

いつかもし、修からの愛を感じられなくなったら……。

私はどうなってしまうのだろう。

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