専務が私を追ってくる!
それから数分後。
コンコン
専務室の扉がノックされ、私は反射的に「はい」と応答した。
それと同時に我に帰る。
仕事中だ。
幸せに浸ってぼーっとしている暇などない。
この時間だし、きっと園枝さんが仕事を持ってやってきたのだ。
さあまた仕事が増えるぞ。
そう思って自分に気合いを入れ直す。
しかし、聞こえてきたのは園枝さんの声ではなかった。
「あの、開けてもよろしいでしょうか」
遠慮がちな女性の声だった。
驚いて、再び反射的に「どうぞ」と応答してしまった。
一体誰だろう。
清掃員のおばちゃんは朝イチで来たし、こんなに若い声じゃない。
事務所にいた修ファンの女子社員が、何かしら用事を見つけてやって来たのだろうか。
それならきっともう大丈夫。
さっきのキスで、今の私は穏やかだ。
「失礼します」
カチャ、と上品な音がして扉が開く。
私は立ち上がって、彼女を迎える姿勢を整えた。
廊下に差し込む光と共に専務室に入ってきた女性。
想像を絶する人物に、私は言葉を失った。