専務が私を追ってくる!
なんか……なんだか、すっごく嫌だ。
頭がクラクラする。
「それで、あの、修さんは?」
「申し訳ありません。生憎、つい先ほど外出いたしました」
冷静を装って、いつも以上に秘書を演じる。
動揺を悟られてはいけない。
「残念。雨宮社長にご挨拶している間に、入れ違ってしまったみたいですね」
彼女はしゅんと眉をハの字にしてため息をついた。
仕草からも育ちの良さが滲み出ている。
「本日はもうここに戻りません。お言伝があれば、私が承ります」
私は平身低頭しながらもどこかに穴や裏がないかとメガネの奥で目を光らせる。
「いいえ、結構です。また次の機会に伺います」
「そうですか」
次の機会? また来るつもりなの?
ていうか、元カノなんでしょ?
一回別れてるのに見合いの話を受けたということは、修に未練があるの?
「すみません、急に押し掛けてしまって。お邪魔しました。失礼いたします」
彼女はとびきりの笑顔を見せて、専務室を去っていった。