専務が私を追ってくる!

「そんなに落ち込まなくてもいいじゃん。目立ってるわけじゃないし」

修は思ったままを口に出しただけだ。

悪気があったわけではないし、私を落ち込ませるつもりもなかった。

頭ではわかってる。

でもーー……。

鏡の前で顔を伏せた私。

洗面脱衣所の外からその様子を伺う修。

彼の腕の中で無邪気に鳴くミキとミカ。

鎮まれ心。

どうして私の心はこの程度で暴れるのだろう。

今さら心の清らかな良い子になりたいなんて思わない。

嫌な私の暴走を簡単に抑えてしまえるだけの力が欲しい。

強くなりたい。強くなりたい。

強く、なりたい……。

ぽたり、白い化粧台に雫が落ちる。

顔が上げられない。

妬み嫉みにまみれた醜い涙なんて見せたくない。

「美穂」

シミを見つけて落ち込んでいる私を心配する声。

自分がそのきっかけを与えてしまったことに、少しの罪悪感を添えて。

違う。

私が落ち込んでいるのは、それだけじゃない。

「今日、長部さんが専務室に来たの」

喉にありったけの力を込めたのに、声は少し震えてしまった。

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