専務が私を追ってくる!
猫部屋にミカを戻して、リビングのソファーで横になった。
『過去の自分を恥ずかしいと思うのは、既に成長したっていう証拠だ』
そう言って微笑んでくれた記憶が蘇って、ギュッと胸が締め付けられる。
20分後、電話を切った修がやってきた。
「美穂」
まだ仕事着のままの修が、横になっている私の顔の前に座る。
「なに?」
「ごめん。先に謝るよ」
「だから、なに?」
「母さん、無理にでも俺とあいつを見合いさせたいらしくて。今日俺たちが会えなかったのを知って、勝手に日時や場所を決めたみたいなんだ。相手の会社とは付き合いが長いし、親父の顔を潰すわけにもいかなくて……」
「はっきり言ってよ」
私がそう告げると、修はばつの悪そうな顔をして、いったん息をついた。
「見合い、せざるを得なくなりました」
末っ子で甘えん坊の修は、許しを請う顔の作り方をよく知っている。
部屋を散らかしたりドアを開けっ放しにして私に怒られる時、修は女の母性をくすぐるような、甘い反省顔をキメてくる。
彼はこんな時でもなお、その甘い反省顔を作っていた。
それが、余計に癪にさわった。